根強い人気のあるジブリ作品の1つ「千と千尋の神隠し」が、公開されてから18年が経ちました。今でもテレビで放送されるたびに、ネットでは大盛り上がりを見せています。
この記事では、千と千尋の神隠しに登場するカオナシの正体や名シーンについて紹介していきます。
なんとも言えない見た目でありながらも千尋のことを気に入っており、人間の欲を表したと言われているカオナシについて振り返っていきましょう。
カオナシの基本情報
カオナシの基本情報についてまとめていきます。
性別 | 男 |
年齢 | 不明 |
正体 | 己を持たない存在 |
性格 | 大人しい |
声優 | 中村彰男 |
カオナシのそれぞれの項目について解説していきます。
カオナシの見た目・性格
カオナシの見た目は黒い影のような姿にお面をつけています。音を立てず静かに行動し、姿を消すこともできます。作中では性別について触れられることはなく、知らない方も多いとは思いますが、映画のパンフレットに「湯屋とは違う別の世界からやってきた謎の男」との記載があるので、男だと認識しても良いでしょう。
性格は、基本的には穏やかです。しかし、物語の終盤で金や物で釣っても自分の思い通りにならなかった千尋に対して怒りを向けたときには、四足歩行で暴走する姿を見せています。
言葉は物をあげるときに発する「あ…」と、拒絶されどうしたらいいか分からないときに発する「え…」のみ。青蛙を飲み込んだことにより、人間と会話できるようになります。
カオナシの正体
カオナシの正体は油屋を訪れた神様とはまた違う「己というものを持たない悲しい存在」です。
己がないからこそ、物をプレゼントをすることでしかコミュニケーションが取れず、油屋の従業員に対して金をばら撒いていたのです。しかし、欲しいものをなんでもあげると言った千尋だけは頑なに誘いを断り、ショックのあまり暴走してしまいます。
好きな人から拒絶されると怒ってしまう、まさに人間の欲をそのまま表現したものがカオナシです。宮崎駿監督も「誰の心にもカオナシは存在する」と説明しています。
油屋とは違う別の世界からやってきたという設定があるのも納得できます。
カオナシと銭婆(ぜにーば)の関係
カオナシにとって銭婆は自分を受け入れてくれた存在です。
千尋とともに銭婆の元へ行ったとき、入り口の前で佇み中へ入ろうとしないカオナシに「入るならさっさとお入り」と促します。それだけではなく、カオナシの分のお茶も用意し、最後には自分の手伝いをお願いするために住むようにお願いします。
今まで自分の居場所や存在がなかったカオナシに、銭婆は居場所を提供し手伝いという仕事まで与えました。それは、徐々にカオナシの中の「自分」という存在を見つける手助けをしたのではないでしょうか。
カオナシの声優
カオナシの声優を担当したのは、中村彰男(なかむらあきお)さんです。
主な活動の場は舞台で、舞台俳優としてさまざまな作品に出演していますが、カオナシの役がきっかけとなり声優としても幅広く活動をしています。
カオナシのセリフは「あ…」や「え…」が多いため、アフレコでは苦労したとインタビューで述べていましたが、限られたセリフの中でも嬉しい感情や悲しい感情を表現しているのが特徴です。
カオナシの名セリフと名シーン
カオナシの名シーンや名セリフについて解説していきます。
物語の前半では「あ…」と「え…」しか言葉を発さないカオナシですが、喜びや怒りがしっかりと含まれているのにも注目です。
千尋に薬湯の札をあげるシーン
しばらく使われていなかった大湯の掃除をする際に、千尋に初めて接触するシーンです。
千尋が油屋で働くことになって初めての大きな仕事である大湯の清掃をカオナシは姿を消しながら見ていました。番台に札を貰いに来た千尋に対して、札を使わず手で掃除をしろと言った番台蛙に代わりに札を渡すだけではなく、その後も浴場に表れます。
千尋と接触したカオナシは嬉しそうに、高級な薬湯の札を手から出します。しかし、千尋が「そんなにいらない」と断ると「あ…」と言いながら消えていくのですが、この時に悲しそうな顔を浮かべているので、このシーンはカオナシに注目しながら観てみてください。
千欲しい…千欲しい…欲しがれ
金を出して油屋の従業員からもてはやされたカオナシが千尋を呼び出し、何が欲しいか問い詰めるシーンで出たセリフです。
千尋が欲しいものは両親とハクと自由な生活。他の従業員と違って千尋の欲しいものが物ではないため、当然カオナシに出すことはできません。
一方、カオナシは千尋が喜んでくれるならということを原動力として動いているため、「こんなに千尋のことが好きなのに拒絶された」と感じ、千尋を取り込むとずっと一緒にいられるという考えの他に、千尋自身も欲を見せろと暴走してしまうのです。
このセリフの直前、千尋の問いにも終始「寂しい…寂しい…」と言っており、ここで初めてカオナシの本心が出たシーンでもあります。
銭婆の手伝いをするシーン
千尋とともに銭婆の元へ行き、手伝いとして編み物や糸の紡ぎ方を教えてもらうシーンです。
初めはどうしたらいいか分からないというような態度をしていたカオナシですが、銭婆の手伝いをしていると徐々に腕を認められ「うまいじゃないか。ほんとに助かるよ」と褒め、感謝を伝えます。カオナシに必要だったことは誰かに認めてもらうこと。銭婆はそれが分かっていたのかもしれません。
最終的には銭婆の家に住むことになりますが、銭婆から手伝いをしてほしいと言われたときのカオナシは心なしか「ようやく居場所ができた」と喜んでいるように見えます。
まとめ
「寂しさ」や「孤独」など人間の心の闇を表したと言われているカオナシですが、カオナシにとって千尋は優しく接してくれた存在。そんな千尋のためなら何だって出来るけれど、断るためにカオナシに対して凛とした姿勢で立ち向かっていく千尋の成長も同時に見られます。
また、欲に惑わされない銭婆の元で暮らしていくことを選んだカオナシにも心境の変化がみられています。
カオナシと同じように拒絶されてしまってどうしたらいいか分からなくなってしまったなど、似たような経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか?