20世紀の日本を代表する作品、【もののけ姫】その人気は当時から凄まじく当時の日本の長編映画の興行収入記録を塗り替えるほどの人気を誇りました。
その魅力は何といってもポスターに描かれた口元を血だらけにしたもののけ姫がこちらをにらみつけている姿です。
しかし、その魅力はそれだけではなく細部にまでこだわったシーンやキャラクター達の存在も映画【もののけ姫】を大きく盛り上げてくれる要因の一つです。
今回は、そんな脇役中の脇役「甲六」について基本情報や名シーンについてご紹介させていただきたいと思います。
「甲六」の基本情報
「甲六」の基本情報をご紹介していきます。
性別 | 男性 |
職業 | 牛飼い |
妻 | トキ |
声優 | 西村雅彦 |
「甲六」の見た目と性格
トキの夫で牛飼いの一人です。40歳代半ばと思われる風貌で、背も低くも高くもない程度です。
集中豪雨の中で米を運搬中にモロの子の山犬に襲われ谷へ落下し、川の中からアシタカに助けられた、明るい性格でドジだが憎めない性格。
妻であるトキに尻に敷かれている存在で、「グズ!」「この役立たず!」と罵られているが反論できずに縮こまってしまっている。
しかし、それでも最後には妻にも見捨てられることなく「あんなやつでも私の夫」と、愛されている様子です。
タタラ場には子供がいない
【もののけ姫】の作品中、唯一夫婦であるという描写がされている甲六夫妻ですが、子宝には恵まれていないようです。
しかし、それには【もののけ姫】の時代背景や、タタラ場の立地している場所が関係しているようです。
タタラ場は危険な場所という事が関係しています、タタラ場では戦争で使用する鉄を生成する工場があり、山々を切り開き開拓しています。
そして、山を切り崩すことにより山犬に襲われたり、タタリ神がいつ攻めてくるかもわからないいわば「戦場」のような場所にあります。
単にその場所が危険であるという事もありますが、その描写方法として戦場には向かない子供や老人が作中で登場しないという理由として挙げられています。
ジブリでは子供が活躍するというシーンが多く、主人公であることも多いですが全く子供が出てこないという作品も珍しいです。
男が威張らない
タタラ場では、「甲六」の妻であるトキが「男がいばらないしさ!(男が威張らない過ごしやすい場所という意味)」と発言しています。
そして、男衆の代表格であるゴンザもこのトキに言い負かされてたじたじとしていました。
そして、その描写には宮崎駿監督の「従来の時代劇の常識や先入観や偏見に縛られず、より自由な人物像を形象スル場所である」と語っています。
その自由な人物像には今までのステレオタイプな武士や農民、男と女の関係ではなく男にも負けない力強く製鉄所で働く女性という描写に表れているようにも思います。
タタラ場を収めるエボシ御前からもその女性の強さというものが伝わってきます。
シシ神に襲われ絶望する「甲六」に対しても「この役立たず!」や「生きてりゃなんとかなる!」などとても男よりも力強くポジティブな描写をされている点も女性の強さを感じます。
決して「甲六」をはじめとする男衆がだらしないわけではありませんが、この活気あるタタラ場では女衆の方が男たちよりも活気や生気に溢れているという事です。
「甲六」の名シーン・名セリフ
「甲六」の名シーン・名セリフをご紹介します。
「おトキ、勘弁してくれよー」
アシタカに助けられた甲六は、すみかのタタラ場に連れてきてもらい、タタラ場の住民に迎え入れられます。
そこでの甲六と妻のトキとのやり取りになります。ケガをして帰ってきた甲六を「このグズ!牛飼いが足をくじいてどうやっておまんまを食って組んだ!」とどやしつけます。
さらには、「心配ばっかりかけやがって。いっそ山犬に食われればよかったんだ。そうすりゃあたいはもっといい男を見つけてやる」とまで言われ言い返した「甲六」の言葉になります。
タタラ場では女性が弱い存在という訳ではなく、男も女もない自由な生活をしていることが伝わってきます。
そして、最後には助けてくれたアシタカに対しあんな男でも一応旦那なので助けてくれてありがとうと、お礼を言う姿は「甲六」が愛されている姿が垣間見えます。
「すげー。シシ神は花さかじいさんだったんだ」
首を落とされたシシ神からは黒いドロドロとした液体が流れ、周りの森を枯らしていきましたが、ラストシーンのシシ神に首を返した後にシシ神が倒れて巻き上がった風を受けた山からは、新たな芽が吹きだしました。
その様子を見た「甲六」のセリフになります。
いかにも「甲六」らしい、ドジで臆病なイメージですがどこか憎めない、そんな人間像を思い浮かべさせられるシーンとセリフになります。
「甲六」の声優があの強面で特徴的な西村雅彦さんというのも、すごく意外で西村雅彦さんの芸の幅広さを感じることが出来ますね。
まとめ
もののけ姫の作中でも少ない登場シーンながら、もののけ姫の舞台や時代背景、常識にとらわれない自由な街の雰囲気を表現する事ができているのも少しドジで役立たずな「甲六」の存在があったからこそわかりやすく伝わってきたのかもしれません。