【キングダム】嬴政(えいせい)はキングダムでは真の王、史実では暴君?

嬴政(えいせい)です。キングダムではと並んで物語の軸になるキャラクターです。

政は秦の始皇帝になりますが、それに至る険しい道のりがキングダムでは描かれています。秦王にふさわしい人格者である政は大変人気を集めるキャラクターでもあります。

史実の内容も多く描かれているので、ここでは政の作中での活躍と史実の情報を合わせて見ていきます。

嬴政(えいせい)の基本情報

【キングダム】嬴政(えいせい)はキングダムでは真の王、史実では暴君?

『キングダム』(C)原 泰久/集英社

まずは政に関する基本情報を簡単に紹介します。

1巻から登場します。最初は弟の成蟜が勢力を持ち、政はほとんど孤立無援の状態で信の前に登場するのですね。

見た目は美男子で、大きな目と長い髪が特徴です。性格は、常に落ち着いていますが、中華の統一という志を持っているが故、現実的に物事を捉え、厳しい一面を見せることも多いです。王としての資質は、昭王を知る王騎すら驚くほど非凡なもので、作中でも度々、「秦王」政としての名場面が生まれます。

幼少期は、王族とはかけ離れた生活を、趙にて送っていました。母親からの愛情も受けず、趙民に暴行される過酷な日々の中、紫夏という女性に救われ、秦に送られます。この過程で、政の人格であったり、王としての覚悟が形成され、今につながっているようです。

キングダムでは、宮女の1人、向と結婚し、麗という娘を授かっています。もう一人、別に子がいるようですがまだ作中では深くは触れられていません。

嬴政(えいせい)の史実における情報

政は勿論史実でも登場するのですが、幼少期を趙にて過ごしたことや、呂不韋陣営との対立等、作中の大きな出来事も事実として記録されていることです。ところが、史実において気になるところは、作中の政との性格のギャップでしょう。

史実の政が、秦の始皇帝となるのが紀元前221年、中華の統一を成しえるわけですが、それと同時に政は「暴君」と呼ばれるほどの悪名も残すのですね。例として有名なのが、呂不韋の葬式で涙した者を全員処刑するエピソードがあります。自分と少しでも対立する芽のある者は問答無用で処罰するという王であったようです。

また、独裁政の色が強くなり、自身の政治と異なる書物をすべて焼き払い、異を唱えた学者400人を生き埋めにしたようです。次いで、万里の長城での重労働や重税が加速して、秦は中華統一後、わずか15年で滅亡することになるのです。

これらの記録は主に中華統一後に起こることですが、キングダムにおける政がそれを果たした後、このような振る舞いをするとは考えづらいですね。史実の政は幼少期の趙での人質生活から、人格を曲げてしまったと推測されますが、キングダムでは紫夏との出会いにより立ち直っています。紫夏というのがキングダムオリジナルキャラであることを考慮すると、政と紫夏のエピソードは、政が史実のような王にならないために挿入された回顧シーンのように思えますね。

嬴政(えいせい)のこれまでの活躍

信との出会い

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『キングダム』(C)原 泰久/集英社

王宮で仕えることになった信の親友が、死に際に信に黒卑村の地図を渡し、そこに向かうよう告げます。それは政の避難場所を指していた地図だったのです。これが政と信の最初の出会いでした。

勿論、漂は政の影武者として命を落としたわけですから信とは最初かなり険悪なムードで過ごしました。ここに、河了貂が加わり、たったの3人でまず昌文君との合流を目指しました。この過程で、政の護衛は信1人ですが、難敵相手に、政の声掛けから信が攻勢に転じる場面も見られ、政の指揮力が伺えます。政にとっては中華統一の道のりの第一歩でありますが、同時に信の天下の大将軍への道も政が一緒に開いていたことになりますね。

山の民と同盟を結ぶ、王都奪還編

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『キングダム』(C)原 泰久/集英社

王都奪還のため、政陣営が頼みの綱として、協力を求めたのが、山の民でした。400年続く、山の民との確執を修復するのは難しいと思われましたが、政は動じませんでした。山の民の女王、楊端和に対し、「中華を統一する最初の王になる」と、自らの野望を口にします。これは「世界を広げたい」という楊端和の思いに共通するもので、心を打ち同盟を結ぶことに成功します。これはそれ以降の秦国の運命をも左右する大きな成果でした。

政の過去、紫夏との出会い

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『キングダム』(C)原 泰久/集英社

先述していますが、政は元々、趙にて人質生活を送っていました。長平の戦いの恨みから、趙民に痛めつけられ、母からも虐待される日々の中で、政が王として立ち直ることができたのは紫夏という女商人との出会いがあったからなのです。このエピソードは、8巻にて登場します。

紫夏が秦に政を還そうとするのですが、政はその境遇から、自分の居場所は秦には無い、自分は王になってはいけない人間だと、自分を責め、いつしか何も感じない程に心を閉ざしてしまっていたのです。そんな政に何度も紫夏は歩み寄り、結果初めて政は人の温かさを感じることができ、王としての自分を取り戻せたのです。政のその後の人格、王としての振る舞いに影響する大きな出来事です。

呂不韋との権力争い

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『キングダム』(C)原 泰久/集英社

呂不韋との権力争いは1巻から40巻にかけ描かれます。これは政陣営が圧倒的に分が悪いスタートであったこともあり、刺客を信や山の民と共に撃退したり、呂氏四柱の昌平君を味方に付け、弟の成蟜を更生させたりと、政が確実に成長し、陣営の力を強くしていく過程と捉えることができますね。さらに大きな出来事では、向との間に麗という子を授かります。政がこうして王としての存在感を増していく中、39巻,40巻の呂不韋との最後の対談は記憶に残るシーンではないでしょうか。当初は、呂不韋の大胆な言動も黙認することしかできなかった政が、この場面では呂不韋と対等に意見をぶつけます。戦争は人が避けることのできないものであるという呂不韋の見解を一蹴し、人の本質というのは「光」であると口にします。それを信じるからこそ、政は中華統一を目指すことができていたのですね。これに対しては、呂不韋も「大きゅうなられましたな」と政の王としての成長に心を動かされます。

政は呂不韋、太后の反乱を鎮め決着をつけますが、史実のように呂不韋らを皆殺しにするのではなく、呂不韋を蜀の地に島流しにし、太后の遺児に関しては内々に城の外に逃がし匿い、太后に対し互いのこれまでの道のりを労う言葉まで掛ける器の大きさを見せました。

嬴政(えいせい)の名シーン

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『キングダム』(C)原 泰久/集英社

政は多くの名シーンを持つキャラクターですが、特に印象的なものは、合従軍編で前線に立った場面ではないでしょうか。

李牧軍が南道という予期せぬルートから侵攻したことで、秦軍としてはそこに兵を向かわせることができませんでした。麃公軍、飛信隊が何とか食い止めようとするも時間稼ぎに過ぎず、圧倒的な兵力の差で、麃公を失い、飛信隊も追撃を受けボロボロの状態で最終防衛線となる城、「サイ」にたどり着きました。李牧軍はもうそこまで進軍してきており、サイを抜けられれば、いよいよ咸陽が侵されるという状況に、流石の信も絶望から疲弊していました。そこに現れたのが政なんですね。これまで幾度となく政は、王宮にて信の前線での活躍を耳にしてきました。その度に信に支えられていると感じていたことでしょう。それをこの時は政が自ら前線に姿を出し秦国のため信らと共に戦いに来たのです。

しかし政が共に戦うとしても、李牧軍との兵力差は歴然でした。これに対し、政はサイの一般人を戦力にするのです。勿論そこには女性も子供も含まれており、信はその策を無茶だと反対しました。ところが政は一般人たちを兵士と化すのが自分の役目だと言い、サイの民を集め言葉をかけるのです。国王がサイに来たと知り涙する民もいる中、政はよく通る声で、そして民たち一人一人に語りかけるような口調で現状と自分たちのやるべきことを話すのです。次々と民たちの気持ちを駆り立て、檄を飛ばし士気を最高潮にまで上げます。鳥肌の立つような空気感に信はそれを大将軍級だと称し、昌文君は自分の信じた政が昭王を超える王であると感激し涙します。

これは李牧が想像する、政の王としての器量を遥かに上回っていたもので、結果的にこの政の登場が李牧の最大の誤算となって合従軍の敗戦に繋がります。王宮以外での政の登場シーンは珍しいので、これは政が目立って活躍する名シーンですね。

嬴政(えいせい)のまとめ

【キングダム】嬴政(えいせい)はキングダムでは真の王、史実では暴君?

『キングダム』(C)原 泰久/集英社

政は人間性が素晴らしい人物です。過去の生い立ちも描かれていることもあり、その分感情移入もしやすいキャラクターですね。中華統一というゴールは果たされると分かっているわけですが、政が苦難を乗り越えていく過程を見ていくと感動すること間違いありません。

王騎を始め、様々な将軍を失う一方、自分が王宮にいるということで、政が一番辛い立場にいるとも言えます。しかし、強い信念を元に、人を信じブレることのない政であるからこそ、信は勿論、他の秦将が忠誠を尽くし、他国の王をも突き動かしていくことができるのでしょう。

キングダムオリジナルキャラである麗という子もいるので、史実とは違う始皇帝の姿が描かれるかもしれません。今後も物語の軸になる人物として、細かいところまで見ていきたいですね。